信州の名工

2015年「信州の名工」受賞
小林 宏一
製本・技術 1981年入社
小林 宏一

高度な製本技術が認められ「信州の名工」を受賞

「長年の熟練された高度な技巧技術を要する手製本の分野で 30 年以上の研鑽を積み、機械では作成不能なミリ単位の精度を要求される束見本作製、合本作成、破損本の修復・改装などに優れた技能を有する。」として、2015 年に「信州の名工」(卓越技能者知事表彰)を受賞しました。来る日も来る日も、地道に仕事を積み重ねるとともに、多くの仲間や関係各所の方々に支えていただいたおかげだと感謝しています。

主に手作業で製作する上製本の見本(束見本)は、実際の製本に先立ち、本番と同じ用紙やページ数でつくります。中身は白紙ですが、これによって本の厚さを正確に判断することができます。表紙やカバーの正確な寸法もわかり、デザインの決定にも活用されます。

また当社の技術を頼って、表紙や中身がバラバラになってしまったり、傷んでしまった古書の修繕の依頼されることもあります。長年受け継がれてきた思い出の一冊や形見の本などは、触れるだけでも緊張します。しかし、当社を信頼していただき、その本が重ねてきた歴史まで任せていただけたと感じて、身が引き締まる思いとともに、この仕事の醍醐味を感じます。お納めした後、お客様からの喜びや感謝の言葉などを聞くと、やはり嬉しく思います。製本の知識や理解を深めながら、技術を磨き続け、自分のものにしていくものづくりの仕事は、想像していた以上に厳しいものです。それでも、目の前の仕事と懸命に向き合いつつ、その難さと奥深さを実感してきたからこそ得られた、大きなやりがいや達成感があります。

技術や知識の全てを、若手へ受け継いでいく

今は、若手を一人前の技術者に育てることにも注力しています。「信州の名工」を受賞することができた感謝の想いを大切に、これまでに習得してきた技術や知識の全てを、後輩たちに伝えたいと考えています。

ものづくりの仕事で大切なのは、手先の器用さではありません。前向きに努力することです。地道な積み重ねは、必ず技術や知識となって自分のものになります。それは、何年経っても変わりません。経験を積み重ね、自らの手でものを形づくる仕事は苦労が絶えませんが、そのやりがいも伝えていけたらと思います。