社員の声

INTERVIEW
技術 (新卒)
製本の面白さに感動!
初心を忘れず、憧れの名工を目指して
N.T.
製本・技術 2018年入社
N.T.

授業で訪れた展示会で「製本」との出会い

愛知県出身で、名古屋市にある高校で印刷や出版などを学ぶ学科に通っていました。授業の一環として、毎年、印刷機材関連の展示会を訪れます。そこで渋谷文泉閣の展示に出会い、惹かれました。以前から気になっていた「なぜ本はこうなっているんだろう」という様々な疑問に答えてもらい、製本の面白さに感動しました。夢中になって話し込み、集合時間に遅れるほどでした(笑)。

翌年の 2 年生の時にはブースの担当者に名刺をいただき、3 年生になって進路を決める際、渋谷文泉閣で働いてみたいと先生に相談しました。上製と並製、両方の製本を行なっている会社は全国でもあまりなく、もう渋谷文泉閣しか見ていませんでした。先生が名刺をもとに電話をかけてくれ、そこから面接、入社へとつながりました。

「本が好き」だから、難しい仕事にもやりがい

入社して最初に配属されたのは、本の背を糸で綴じる「かがり」の部署。さまざまな紙の特徴を把握し糸で綴じる「かがり」は、伝統的な上製本の技術で、丈夫な本をつくる大切な工程です。そこで経験を積み、今は「手作業」という部署にいます。

「手作業」はその名のとおり、人の手で対応する工程です。機械では難しい作業を担い、ドイツ装の表紙の手貼りや本フランス装のくるみなど、一冊一冊丁寧に手でつくっています。ちょっとした修復作業を依頼されることもあります。

最近は、とてもこだわった装幀や作業の難しい本が多くあります。正直なところ「面倒だな」と思ってしまうこともありますが、だからこその、やりがいもあります。作業に手こずりながらも、やっぱり「本が好き」なので、きれいに仕上げられるよう工夫し、できあがった時の達成感の方が勝っています。

憧れていた「信州の名工」の技を受け継ぐ

手作業の部署に配属になった翌年、ずっと希望していた手製本にも関わるようになりました。「信州の名工」(卓越技能者知事表彰)を受賞した当社の技術者・小林宏一さんに、その技を教えてもらうことが入社前からの憧れだったので、とうとう念願が叶い、本当に嬉しい思いでした。

手製本とは、主に「束見本」のこと。装幀や仕様を確認するために、本番と同じ用紙・頁数でつくる見本で、いちから手作業で仕立てます。本の設計に必要となる「束」(つか=本の中身の厚さ) を確認する意味もあり、重要な工程です。用紙や頁数を誤った見本をつくれば、本番時のトラブルになりかねません。

最初の頃は、目の前の作業に追われ、素材を間違えたり、折丁の台数が少なかったりと、失敗も多くありました。今は自分の作業の意味を考えられるようになり、徐々に任せてもらえる作業も増えてきました。それでも、まだまだ小林さんにしかできない「技」があります。いつかその技を学び、跡を継げればいいなと思っています。

MESSAGE

小さい頃から本が好きで、生活の一部にいつも本がありました。作家になることにも憧れましたが、文章を書くことは苦手。そんな中「製本」という仕事を知り、一冊の本をつくるために、こういう関わり方もあるんだと未来が開けた思いでした。

本を仕立てるための紙やクロスなどの素材には、たくさんの種類や色があり、質感も様々です。お客様のこだわりの意図を思い、「どうして、この仕様を選んだのかな」と考えていると、楽しくなってきます。

表にはあまり出ない仕事ですが、カタチにすることで伝えられる本の世界があり、それが製本の魅力と奥深さにつながっています。本屋さんで自分が手がけた本に出会えるのも、この仕事の面白さですよ。

私の一冊

「かがり」の部署にいた頃、母校の 100 年史を当社で受注し、その作業を担当しました。自分と関わりのある本に携われたことがすごく嬉しくて、すぐに恩師に電話をし、「あの本は私がかがったんですよ」と報告。とても喜んでいただきました。製本会社に就職したやりがいを実感しました。

また「手作業」に異動した頃、とても作業が難航し、苦労した本がありました。ようやく納品ができてホッとした後、印刷会社様を通じて、作家の方からメッセージが届きました。装幀の美しさを褒め、製本の苦労に配慮していただいたその内容に、本当に報われる思いでした。こうしたメッセージをいただけることで、また次へとつながります。

そして何より、その作家の方は、私がずっと好きで、どの著作も読んできた憧れの人! 直接お会いできたわけではありませんが、大好きな作家さんとつながれた嬉しさ、私が手掛けた本をその方が手に取ってくれたという感激で、今でもとても大切な思い出です。